馬鹿じゃないのか。
前から思っていたけれど、想像していたよりもはるかに馬鹿だ。
気苦労を重ねて割に合わない思いをして、
その癖いわれのない非難を受けて。
それでも見え透いた強がりで笑ってみせる。
日常化する中傷や陰口や嫌がらせや、
そうしたものから、俺がお前を守りたいのに。
俺は結局、何もしてやれない。
苛々して、それを日野に当り散らして、
自分がこんなにガキっぽいだなんて思わなかった。
ああ、腹が立つ。
どうして俺が、お前の代わりに
怒ってやらなきゃならないんだ!
怒る俺をなだめて、日野は言う。
『私には、私のために怒ってくれるひとがいる。
それだけで頑張れるよ』
本気で馬鹿だと俺は思った。
このお人よしの馬鹿さ加減に救われた俺も同じくらい馬鹿だ。
力の限り抱きしめた。
さっさと泣いて吐き出してしまえば良いのに。
土浦君、痛い、と言って。
日野は俺の背中に腕を回した。
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