インモラル・キス

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「悠里、俺が怖い・・・?」


一君に訊かれた。



「・・・どうして・・・?」

「俺が触れようとすると、
少しだけびくってなるから」

私と一君は、卒業後すぐに付き合い始めた。
キスは何度もしているし、
お互いの話もよくする。
私は、一君を信頼していると思う。
教師として生徒である彼と
つながっていられた間が終わり、
恋人同士となった今は。
私たちが何をしようと、
それは私と彼だけの問題だった。

今も、抱き合って。
私は彼にキスをされていた。
慣らされたキスを。
愛情深いキス。

私の反応に、気が付かれていたなんて思わなかった。

「・・・あのときのことを、
気にしているのか?」




―― あのとき。





「何、を」

「俺が、押し倒して、
先生を犯そうとしたとき」

ドクン、と心臓が鳴った。

「今も・・・気にしているから。
だから、俺が怖いのか?」

一君は、酷く悲しそうで。
私は、否定しようとしたのに。
言葉が、出てこなかった。
沈黙の後で、やっと言葉を紡ぐ。

「・・・君を、怖がったりしないわ」

「嘘を吐くなよ。
・・・震えてる」

私たちは、不自然な程、
キス以上の行為を避けた。
それはまだ、お互いの距離を
はかりかねているからだと
思い込もうとしていた。
・・・私は、ほっとしていたのだ。

「ごめんな・・・先生。
俺はもう、キスだけじゃ足りない。
大事だから、待ちたかったのに、
どうしても、先生を――
悠里を、俺のものにしたいんだ」

「一君・・・」

「もう少しだけ、何とか待つから。
悠里、そろそろ覚悟を決めてくれ。
俺は誓えるから。
きっと、守ってみせるから。
・・・もう二度と先生を怖がらせたりしたくない」

一君は、私の額にキスを落として、髪を梳いた。

「ごめんなさい・・・ごめんね、一君」

君を、傷つけてしまった。

「・・・謝らなくて良いよ。
俺の方こそ、ごめんな」


「・・・何を、謝るの?」


「何があっても、
絶対手放してやれないこと」

「それは、謝らなくても良いわ・・・」




私だって、君を手放したり出来ない。




自分がまだ、
引きずっているだなんて、
認めたくなかったのに。






to be continued


















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