僕が君の味方だ、最後のひとりになっても

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「先輩・・・日野先輩」

「あれ、どうしたの?志水君」

第二セレクション終了後。
曲も、解釈も、志水の好みだった。
それ以上に、聞き惚れた理由はきっと。
その音の深みに魅せられたから。
感動したと伝えようとして、
控え室を訪ねた。
コンクールの1位を射止めたのに、
彼女は浮かない顔をしていた。

「一位・・・おめでとうございます」

「ありがとう」

「あの・・・元気が無いように見えます。
何かありましたか?」

「ううん、違うの・・・。大丈夫」

「僕、先輩の音が好きです」

「そう・・・? 私は、私の音が分からないの。
私の音なんて、本当にあるのか、分からない。
君が好きだという私の音が、
もしも・・・まぼろしだったら、君はがっかりする?」

「・・・先輩、サンタクロースって信じていますか?」

「昔は」

「ネッシーは信じていますか?」

「・・・いて欲しいとは思うわ」

「ファータは」

「信じているわ」

「まぼろしだって、信じていればそのうち、
本当にあることになります。
まぼろしだと思っているものだって、
どこかに本当にいるかもしれませんよね?
先輩は、自分の音を信じてください」

「・・・志水君」

「もしも、自分を信じられないというなら、
先輩の音を好きだと言う僕を信じてください」

「志水君・・・ありがとう」

「では、改めて。
日野先輩、おめでとうございます」





end.







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