●● ALL IN LOVE IS FAIR ●●
先生、貴方を見ていると楽しいんだ。
どういう意味かって?
例えば、先生はよく怒るよね。
いろいろな理由で、腹を立てる。
たいていは僕や、B6や、他にももっと、たくさんの誰かのために。
いつも心を砕いている。
それを眺めているのが楽しい。
・・・はは、でも本当なんだ。
気がついていたと思うけれど、
僕はわざと間違えていた。
はじめは、軽い気持ちでからかっていたのに、
あんまり一生懸命になるから、
次第に僕も本気になった。
知ってる?
先生は、ため息をついた後で、
本当に優しい目で僕を見るんだ。
呆れたり、しても。
少しおかしそうに笑って。
そういう先生を見るのが好きだった、
僕が何か言われるたびに、
貴方の方が痛そうな顔してた。
僕はそんな貴方に惹かれた。
でも理解が出来なかった。
何故、僕のためなんかにそんなふうに怒れるんだろう。
一度、貴方が泣きそうな表情をしていたとき、
僕が痛くなった・・・そのときまで分からなかった。
貴方を傷つける存在を全て消し去りたいと思った。
それなのに、貴方は僕のために傷ついていたんだ。
そんな顔しなくていいよ、
僕はもう大丈夫なんだ。
貴方が傍にいるんだから。
研究所の職員は、僕を丁重に扱った。
優しかったと思うよ。
ただ、僕は息苦しくて、そこから逃れるために
何をすれば良いのか分からなくて、
繰り返されるテストの答えを、
出鱈目にしたんだ。 一度ね。
職員は、僕をなだめようと必死になって、
君は人類の財産なんだ、と言った。
僕は僕のものでなくて、
《人類》が共有すべきものなんだって。
僕には今も分からない。
能力が優れていることの価値が分からない。
僕には、僕なんかよりも
貴方の方がずっと、ずっと上等な人間だと思うよ。
貴方を独り占めしている幸運を、いつもかみ締めている。
僕に対して嫉妬をするひともたくさんいたよ。
研究書の、スタッフのひとり。
優しい女のひとだったのに、
僕はそのひとを苦しめた。
そのひとは、才能に恵まれている癖に、
と言って泣いて僕を責めた。
子ども相手に、不公平を嘆いてね。
僕はそのときもただ見ているばかりで、
何も言えなかったけれど。
でも、今なら思うんだ。
僕には確かに持って生まれた何かがあるけれど、
それは誰もが同じなんだ。
僕は、貴方に嫌われたら、
死んでしまっても良いと思うときがある。
何も惜しくない。
貴方がいない世界には未練はない。
だから、僕が特別であっても、
そんなの関係ないんだ。
愛の前では、皆平等なんだ。
僕を見てくれるひとは、あまりいなかった。
僕の才能にしか用がないひとばかりで。
でも、貴方は違う。
貴方がいてくれる。
貴方は僕の神様だよ。
大げさだね。
でも、貴方の前では、僕は敬虔な気持ちになる。
凄く優しくなれる気がするんだ。
珍しく、よく話す?
うん・・・確かに、ちょっと今・・・眠い。
でも、言葉で伝えるのも大事だから。
僕は今、本当に幸せなんだ。
どうしてだと思う?
貴方が幸せだから。
貴方を幸せにしているのが僕だから。
ずっと、ずっと、貴方の傍にいたいんだ。
・・・顔、真っ赤になってる・・・。
照れなくてもいいのに。
愛してるよ、・・・本当に。
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