はぴば記念C

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「着方が分からないような服、初めてだわ」

露出が少ないものが思いのほか多いのが救いだ。
しかし、本当にどこから入手したのかよく分からない。
ナース服、メイド服、バニーなど、小道具も充実している。
よく分からないところでは、ディズニーのアリスの衣装もある。
有名な喫茶店のウェイトレスの制服もあった。
私の年でこれは・・・。 無理だ。
壮大な悪夢を見ている気分になってきた。

(これで笑われたら、立ち直れない気がする)

いっそ、笑われた方が救われるかもしれない。
なるべくダメージの少なさそうな衣装を物色するものの。

(どれも大打撃だわ・・・)

私は、度胸がある方だと自負していたが、
それでもこれは苦しい。

結局、一番露出の少ないメイドの服を着て、
おそるおそる扉を開けた。



待ちかねたような皆の注目を浴びる。

「可愛い〜、センセ!」

「悪くはないが・・・他の desigh の方が良い」

「うう・・・、これ、相当恥ずかしいわよ」

「服を着るのに恥ずかしがる reason など無い!」

翼君の職業はモデルだ。
そもそもB6は、皆見られるのに慣れている。
私は、そうではないのだ。

一言もない瞬君と一君を見る。
瞬君は、声も出せない程大笑いしていた。

「・・・酷いわ、瞬君」

「ご、めん・・・あ、はっはっはっは!」

「良いわよ・・・笑ってくれた方がまだ気楽」

「似合うぜ、嘘じゃないって・・・」

睨むと、本当にすまなさそうにしているものの、
笑いを抑えきれないようだった。

「はじめ、コメントは〜?」

「・・・可愛いよ」

「良いです、お世辞は・・・」

「本当に、可愛いって」

「これ、プレゼントになるの?」

驚いてはくれるかもしれないが・・・
喜ぶだろうか?

「なるなる。 信じろよ」

その後も唆されるままにいろいろと着てみた。
だが、翼君はどれも気に入らないらしく、
結局深夜にまで及んでしまった。
私はもはやぐったりしていた。

「しょ〜がないな、この魔法使いの
ゴロちゃんが、トッテオキを出してあげるにゃ。
・・・・・・ポペラ☆」

「取って置き・・・? それは何だ?」

「ん〜。 これだよ。 じゃじゃ〜ん!」

悟郎君が持参したバッグは、かなり大きかった。
化粧道具のみにしては、かさばると思っていたが、
まさか衣装を持参するとは。
悟郎君が自慢げに取り出したもの。
それを見て、少しだけショックだった。
着てみたい、と。
昔思ったことがあった。
・・・微かに。

「あ〜〜、それ、良い」

「・・・成る程。 モウテンだったな。
nice だ悟郎。 着てみろよ、タンニン」

「ああ。着てみたら良い」


「・・・・・・うん。着てみる」

一年に、一度の清春君の生まれた日。
今日は、特別な日なのだ。
羽目を外しても・・・許されるだろうか。
今の私が着たら、きっと浮いてしまう。
絶対に似合わないだろうそれに、
手を伸ばしたのは・・・。
気の迷い、だと思いたい。




サイズはぴったりだった。



「・・・それで決まりだな」

「メイクは余りしない方が良さそう。
ザンネンだな、ゴロちゃん張り切ったのにさ」

「・・・っく、はは・・・。
楽しませてもらった・・・」

「笑うなよ、瞬。
・・・清春が羨ましいぜ、俺は」

「私は今、とても恥ずかしいんですが・・・、
本当にこれで良いのかしら・・・」

でも。
もしも、選ぶのなら、これが良いな。

「明日の朝、マンションまで送らせる。
今日は客室に泊まれ。
お前たちは、ここで雑魚寝だな」

「じゃ、ボクはソファ使うね」

「俺は・・・今夜は寝ない」

「俺も、せっかくだから起きてる」


「お言葉に甘えて・・・私は休ませてもらいます。
皆、本当にありがとう・・・おやすみなさい」

永田さんが用意してくれた、パジャマに着替える。
皺にならないように、ハンガーにかけた。
案内された客間の、私のベッドの2倍はある、
大きなベッドを見た瞬間。
思い切りダイブしていた。
目が覚めたら会いに行く。




・・・もうすぐ、会えるんだ。




to be continued









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