君だけが知らない

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皮膚の下にある、骨。 筋肉。 内臓。
その全ての名称と機能を僕は理解している。
けれど、どこまで暴いても、
それは君を知ることにはならない。
触れても、触れても、
どうしても交われない。
ひとつになれない。


「悠里、悠里・・・大好き」


眠る君を、いつまでも眺めていられる。
空調を変える。
肌寒いと、感じる温度に。
君は、僕に縋って、
僕の熱を貪る。
二人の体温がしっくりと馴染むまで、
僕は君を腕の中に閉じ込める。


つながったところから、
溶けて混ざれば。
この孤独から逃れられるだろうか。
愛情を知る前は、僕は孤独に耐えられたのに。
今は、悠里がいないと、
どうしようもなく苦しい・・・。


「うう・・・寒い」

「悠里、風邪?」

額に掌を当てて熱を測ると、熱い。

「・・・ちゃんと、測って・・・」

「うん・・・ごめんなさい。
授業の進行が乱れるから・・・
なるべく休みたくはないのに・・・」

「無理をしたらいけない」

「そうね、ありがとう・・・」

上着を脱いで、肩にかける。
悠里は大人しくしている。

「・・・瑞希君、今日は大学の後、
バイトよね」

「予定はキャンセルするよ。
悠里の傍にいないと、落ち着かないもの」

「・・・ダメよ、行って」

「・・・どうして・・・?」

「どうして、って・・・。
私の風邪はたいしたことないもの。
君を必要としてるひとがいるのよ?
講義だって、いつかきっと君の助けになるわ」

「でも・・・、僕は」

悠里は苦笑した。

「私は私の面倒くらいみられるから、
心配しなくても大丈夫」



悠里は、何も分かっていない。




悠里がいなければ、
僕は僕の面倒をみられない。
講義も、バイトも、
きっと何も手につかなくて。
悠里のことばかり心配して過ごすのに。


「悠里は・・・仕事があっても、
僕が風邪をひいて、
傍にいてって言ったら、
・・・いてくれるだろう?」

「そうかもしれないけれど・・・。
だって、たいした風邪じゃないし、
ひとりでも平気よ」

「僕が平気じゃない」



全然平気じゃない。



「だから、悠里。
僕に傍にいてって言って。
僕が、必要だって。
僕が悠里に、
必要とされているって、
思いたいんだ」

僕は、悠里に依存している。
自分でも、良くないと思っている。
でも、どうしたら手を伸ばせずに
いられるんだろう?
本当に、大切なひとだから。

「・・・それなら、お言葉に
甘えてしまおうかな」

「バイト先に、・・・電話して謝る」

「うん・・・ありがとう、瑞希君」


もとはと言えば。
僕の子ども染みた悪戯が原因だったのだと知れば。
呆れて怒りながらも、きっと許してくれる。
布団にくるまって眠る悠里を
起こさない程度に声を落として、
僕はそっと謝ったのだった・・・。












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