似合わねえなあ





―― 一緒に登下校とか、恋人同士みたいだね。

違うのかよ、と笑う土浦君は悔しいくらい魅力的だ。

「だって、照れるよ」

「まあな。 俺も少し照れる」

歩幅が違うから、少しだけゆっくりとしたペースで歩いてくれる。
私の贈ったマフラーを、律儀に身につけてくれる。
所謂、恋人同士・・・ではある。

「ずっと、友達みたいだったものね、私たち」

「コンクールのときは、ライバルだったしな」

「土浦君は、面倒見が良かったよね。
あのころは、助けられてばかりだったね・・・」

「香穂。 手袋は?」

「・・・え?」

「今日は、手袋してないだろ。 どうしたんだ?」

「ああ、ほつれちゃったから。
昨日直そうとしたけれど、間に合わなくて」

「寄越せ」

「え?」

「手だよ」

言うなり、手を握られてしまった。

「ほら、冷たい」

「・・・・・・」

「握っててやるよ。 学校まで」

「そういうことが、
普通に出来てしまうんだよねぇ、
土浦君は・・・」

体温が上昇するような気分だ・・・。
実際に上がっているかもしれない。

「似合わないか?」

余裕の態度が少し、気に障る。

「似合わない・・・こともないような・・・」

「はは、何だよ」

冬に感謝する朝。
恋人同士って、照れくさいものだね、と言うと。
土浦君はさらに笑って、私の頭を軽く叩いた。









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