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エントランスは、お昼時に混む。
生徒の目当ては購買だ。
「やっり〜!カツサンドゲット」
日原は大量にパンを買い込みご満悦だった。
通りがかった呆れ顔の友人にも全開の笑顔を向ける。
「火原、お前ちょっと食いすぎ」
「だっておなかすくんだよね」
「にしてもお前それ全部食うのかよ・・・」
「元気ですね、火原先輩」
日野もまた偶然通りかかった。
「あ、日野ちゃん。どうしたの、購買にいるの、珍しいね」
「うっかりお弁当忘れちゃって」
「あのさ、今からお昼? 一緒に食べない?」
「はい! ご一緒しましょう」
「今日はついてるかも・・・」
「え?」
「あ、えっと。その・・・うん、いや、何でもない。」
「私もカツサンドにします。美味しそう」
「うん、ここのはすっごく美味しいよ!
毎日食べても飽きないし」
「あはは、先輩らしくていいですね」
火原はとても明るくて、
日野は日原といるとつられるようによく笑う。
「だって、好きなんだ」
驚くほどに、気持ちがこもったことばだった。
「あ・・・」
「本当に、好きなんだ」
「えっと・・・カツサンドが、ですよね?」
火原は顔を赤くする。
「・・・日野ちゃん、俺が買ってきてあげるから、持ってて」
突然、大量のパンを手渡された。
「え! あの・・・先輩?」
「すぐ戻るから!」
人ごみの中に、走っていってしまう。
「もう、買ってあるんですけど・・・」
困ったように呟いた後で、日野は思わず笑い出した。
end.
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