おやすみ

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吉羅さんは、よく眠る。
仕事が忙しいのだろうか。

今も私の膝に頭を乗せて熟睡している。
初めて会ったときからずっと、
冷たくて厳しい顔立ちをしている。
よそよそしくて、近寄りがたい。
大人だから、立場があるから。
それ以上の何かがあると、感じていた。

「・・・香穂子。 視線を感じる」

「すみません、気になりますか?」

「いや。ただ、私の寝顔を見て面白いのか?」

「面白いですよ」

実際、ずっと眺めていられると思う。

「だから、もうしばらく
眠っていてもらえませんか」

「ああ」

もう一度、目を瞑る吉羅さんは、
微かに笑っているように見えた。




私は、貴方の。
心から休まるところになりたい。
止まり木のように。





「おやすみなさい・・・」





目が覚めたら、ヴァイオリンを弾こう。
貴方はきっと、何時も通り。
黙って耳を傾けるだろう。

その安らかな眠りを守るために。
私は、最新の注意を払って、上着をかけた。



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