Say you love me! 翼&一編

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歌いつくして、笑いつくして。
疲れが溜まっていたのか、
アルコールのまわりが凄く早くて。
私は、いつしか座席に横になっていた。
上着が、かけられている。
靴も、脱がされていた。
起きなければ、と思うのに。
身体が重い。
眠るのが、心地よすぎて、
瞼を開けられないでいた。



髪に、触れられる感触。
夢とうつつと、定まらなくて、
雲の上にいるみたいで。
凄く、気持ちが良い。


ああ・・・清春君だ、と思った。
眠っているときは、優しい。
眠ったふりを、・・・ずっとしていよう。










深夜三時。
悠里はさっさと酔い潰れて、
ソファの上に身体を横たえて寝てしまった。
その無防備さには呆れるばかりだが、
とりあえず、二人の上着をかけて置く。
着のみ着のままといった風情だったので、
冷房が効きすぎている室内では寒そうだったからだ。


「酔い潰れてる・・・。
ああ・・・何かヤバイかな、これ」

一は、眠る悠里の手がだらりと下がっているのを
身体の上に置き直そうとした。
すると、手を握られてしまう。
ほどくのも忍びなくて、
そのままにしていると、翼に睨まれた。

「・・・ああ、相当ヤバイだろうな。
お前らしくないと思うぞ? 一。
清春から Call があって、
迎えに来たとはじめから言えば良かったのに」

二人で久しぶりに会っているときに、
清春から電話がかかって来たのだ。
珍しく、焦りを滲ませた口調で。
二人が駆り出されたのだった。

「慌てて探す様子が目に浮かんだぜ。
はは、あいつがねぇ」

苦笑して、氷が溶けてほとんど水になった酒を
口に運ぶと、甘すぎる味がした。

「分かってるなら、尚更だろう。
さっき確認したら
俺の着信履歴も25件 full だったぞ」

「本人に電話すれば良いだけだ。
振り回される立場に立ってもらうのも、
たまには良いクスリだろ?・・・清春には」

「それもそうかもしれないな・・・。
で、これはどうする?
起こすのも可哀相だが、
このまま放って置く訳にもいかないだろ。
俺かお前の部屋に運ぶのもマズイし」

「大丈夫、清春には電話してある。
すぐに来るだろ。 多分」

「全く・・・人騒がせな奴らだ」











身体が、ふわりと浮いた。
私は、夢の中にいるまま。
どうやって、謝ろうかとか。
謝るのも、どうなのとか。
いろいろなことが、
浮かんでは消えていって。
君のことだけで、いっぱいになってしまう
自分がおかしくて、笑ってしまった。












「こら、起きたか・・・」

「・・・清春君、何で?」

目が覚めると、そこは私の部屋の私のベッド。

清春君は、私の隣にいて、
腕枕をしていた。

「って・・・!
なななな何してるの?」

しかも、上半身服を着ていない。
下は確認する勇気が無かった。

「・・・全く、世話の焼ける女」

「私、昨夜、翼君と一君とカラオケして・・・」

その後の記憶が一切無い。

「お前は、浮気するって宣言して
イキナリ出て行ったんだ。
ったく・・・、ホンット、
めんどくさいんだっつの、ヴァーカ」

「・・・う。 でもでも、君も悪いでしょ!」

「俺にどうして欲しいのか、
ハッキリ言わねェのが悪い!」

「だって・・・だって、
言ったら聞いてくれるの?」

「・・・聞かなきゃ分かんね〜けど。
言ってもみないのってどうなンだ?」

確かに・・・私は。
初めから諦めてしまっていたかもしれない。
清春君に。
甘えたことがあるだろうか。

―― 鬱陶しがられそうで、だから。

それでも、甘えてみても良かった。
付き合っているのに。

「じゃ、あ。 言います」

コホンと、咳払いをして。

「たまには、恋人らしく、もう少し、
甘い雰囲気を作ってみてはくれないでしょうか」

一息に言うと、清春君は、
それはそれは優しく微笑んだ。

「甘い雰囲気ねェ・・・」

「たまには、で良いから・・・。
だからその」

恋人らしく、と言い掛けたところで、
私は自分が不用意な発言をしたことに気がついた。

「俺は、やさしい、やさし〜〜い、
コイビトだもんなァ・・・。
その願いを聞き届けてやる」

「・・・あの。 もしかして、怒っている?」

「・・・どう思う? 悠里」

それは、天使の微笑だった。

「あのね、ちょっと待って。
私が君に過去どんな目にあわされてきたか
思い起こしてみれば、 昨夜の私なんか可愛いもんじゃないかと・・・」

「言い訳は聞かないぜ?
浮気したかどうか、
身体に聞いて確かめる」

「・・・してないしてないってば。
出来る訳がないでしょ!」

「・・・本心じゃなくても、
好きな女の口から聞きたくない
台詞ってのがあるんだよ」






to be continued





















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