「私、・・・君の好きな
「くっだんね〜こと聞くなバカ!
俺は久しぶりにマジで怒ったぜ・・・」
私は、嬉しくて、
身体を丸めて清春君にひっついてしまった。
「・・・浮気なんかしないってば」
それが出来るようなら、
ヒステリーなんて起こさない。
「それもそうだが・・・
それだけじゃねェんだなァ・・・。
ナギに言われた」
まず、カラオケに迎えに行き。
ソファに仰向けに横たわる無防備な姿を見た。
その時点で相当清春の気分は暗くなった。
しかも、悠里は一の手を握っていたのだ。
最短時間で現れた清春に、二人は苦笑した。
―― あんまり、先生を泣かすなよ?
「オマエは・・・アレか?
ナギとカベの前で泣いたってことか?」
「・・・え」
いや、それは・・・。
「泣いてない・・・と思うけれど・・・」
断言できないのは、記憶が曖昧だから。
「ソレはちょっと許せねェ」
「は? ええと、あの」
「悠里の泣き顔を
見ても良いのも
泣かせて良いのも、
俺だけだろ?
――他の男の前で泣くな」
いや、私が泣くのは大体君のせいだ。
「という訳で、今からタップリ
泣かせてやるから、覚悟しろ!」
「全然つながってないじゃない!」
「見せた分を取り戻す!」
「意味が分からないって・・・!」
獰猛なキスだ。
「コイビトらしく、
ロマンチックな時間にしてやるから、
安心しやがれ」
それは、極上の笑顔だった。
「オマエの期待通りに・・・な」
私は思う。
補習の時間に、ロマンチックの意味を
もっときちんと教えて置けば良かった・・・と。
散々泣かされた後で。
清春君は、私に言った。
「カベやナギなら、
もっとオマエに優しくするかもな?」
確かに、それはそうだろう。
もしも私が二人の恋人なら、
いつでも、ロマンチックに、
恋人らしく、過ごすだろう。
「いっそ、アイツらと浮気してくりゃ
良かったんじゃねェ?」
「・・・二人の方で、
相手をしてくれないわ・・・それに」
私は、恋人を抱きしめる。
身体の重みを感じているときが好きだ。
ことばなんて、いらないような気になれるから。
「ロマンチックなことばを、
私が欲しいと思うのは・・・
君の他にはいないんだもの」
世間の恋人同士とは、少し違うかもしれない。
でも、きっと私たちはこれで良いんだ。
「・・・悠里。 耳貸せ」
私は、少し顔を傾けて、
清春君の口元に耳を寄せた。
耳が拾う微かな音。
吐息がくすぐったい。
「・・・ありがとう。 私もよ」
出し惜しみしないでくれたら良いのに、と思いながら。
私の心臓が持たない気がして、
今のペースで良いのかもしれない、と思い直した。
end
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