煙草と飴玉

モクジ
※若月 龍太郎+桜川 ヒトミ 
日常のひとコマ。他愛ないです。

「先生、こっち向いて」

声に振り向くと口の中にあめ玉を放り込まれた。

「タバコ、吸いすぎですよ! すこしくらい控えてください」

つくづく怒ったり泣いたり笑ったり、忙しいヤツだと思う。
見ていると飽きない。
「なんだこりゃ…甘い」

「まだまだたくさんありますから、口寂しくなったら言ってくださいね。それだと長生きできませんから」

彼女が手にしているのは懐かしい缶入りのドロップス。
薄荷味が舌に広がる。

「ふうん? 桜川はオレ様に長生きして欲しいんだな」

「当たり前じゃないですか」

「じゃ、ちょっとこっち来てみ」

「…………? 」


隙をついてキスした。


「ってななな何するんですか……!? 」

「オレが長生きできるかどうかはお前にかかってるんだから、
ちゃんと見張っててくれよ? 」

「もう…誰かに見られたらどうするんですか…」

「誰もいないぜ」

オレとお前の二人きりだ、と耳元で囁いてやる。

「キスしろよ」

「…何で…」

「口寂しいから」

キスしてくれたら、タバコの本数がへるかも、と言うと彼女は笑った。

「嘘吐きだなぁ、先生は」

彼女からのキスはつたなくて、
そっとかすめるように触れてくるだけなのに、
ひどくたかぶった。
深く口付ければドロップスのように甘い味がするだろうか。

「毎日だってするから、禁煙にチャレンジしてみてくれたら良いのに」

「いつの間にか手放せなくなるんだよ、こういうのは」

誰かさんと同じでってのは言わずにおいた。


モクジ
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