くちづけキドニーブロゥ

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日に透ける白い髪に赤い瞳。
日本人離れした・・・いっそ浮世離れした美貌。
腰掛けのアルバイトでありながら、
モデルとして重宝されるのがよく分かる。

夢に向かって全力疾走する彼に
負けまいとする日々のある日。
私は彼のマンションで暮らしていた。


「翼君の写真が好きよ」

根が真面目な翼君は、勉強熱心だった。
特に、写真に関しては。
きちんと整理されたおびただしい量のファイルは、
永田さんでなく彼自らの手になるものと知ったとき、
私は驚きを隠せなかった。
それを、見せてもらう。


写真の中の彼は、何とも言えない色香があった。


(実際話してみると・・・
かなりその、アレだけど)


雰囲気がある。 語るまなざし。
自信に満ちていて、年齢を感じさせない。
生来色素が薄いため、無国籍な印象だった。


「才能があるんだわ」


実は私も内緒で、スクラップをしていた。
会えないときの慰めと、
頑張っている彼の姿を留めるために。
昔のもので手に入りにくいものは、
翼君に黙って永田さんに頂いたのだ。
それが見つかったときは、
翼君は酷く照れてしまい、
少し叱られてしまった。


「・・・オダてても、何も出ないぞ」


「おだててなんかないわ、
だって本当のことだもの。
でも・・・、写真の中の君は、
この写真を見る全てのひとのものだと思うの。
それが、少し悔しいかな」

恋をしているかのような、
強い視線を自分に向けられていると感じる、
女の子たちが、たくさんいるに違いない。

それは、誇らしいことである筈なのに。




「・・・俺が、モデルを始めて、
酷いスランプになったときがある」

カメラマンが指示をする。
望まれるような表情を作れなかった。
初めてだった。
どうしたら良いか分からなくて、混乱して。

「・・・そのときに、たまたま先生が来たんだ。
そうしたら、すっと肩の力が抜けた」

感情が内側から沸いてくる。
表情を作るのではなく、
意識しないまま、気がつくと笑っていた。




「そのときの写真は、俺も気に入ってるぜ。
悠里。 俺の全ては・・・貴方のためにあるんだ。
だから、写真なんかでヤクなよ?」

「うん・・・」

仕事の写真はたくさんあるけれど、
家族写真は少ない、翼君。
永田さんに見せてもらった、アルバムでは。
年を追うごとに笑顔が少なくなる気がした。
最近はよく笑っていて安心する。
それはモデルの顔と違う年相応の笑顔。

「ふ・・・、ヤキモチを焼くなんて、
可愛いところがあるじゃないか。 悠里」

「う。 仕方ないでしょ。
恋人がスーパーモデルだったりしたら、
誰だってそうなるわよ」

「否定しないのか?」

ニヤニヤと笑う翼君に、私はおもむろに近づいた。

「翼君、じっとしていてね」

お気に入りの長いすに横たわってる。
腰に跨るようにして、のしかかる。

「・・・って、おい。 何して・・・」

慌てふためく翼君に、
後ろ手で隠し持っていたカメラを向けて、
写真を撮った。

「隙あり! ふふ・・・、驚いた?
元・教師をからかったお仕置きです!」

「・・・悠里っ・・・」

「って・・・え、きゃああ!」

いきなり頭を掴まれて、
深く口付けられる。
体勢を崩して、思い切り身体が重なってしまう。
カメラが床に落ちる音。

「そういうことをすると・・・、
どうなるか分からないところが、
本当に可愛いと思うぞ」

舌が入り込み、執拗に絡められる。
頭がくらくらした。

「・・・ちょっとした冗談なのに、」

息も絶え絶えになりながら、
何とか体勢を立て直そうとするが、無駄だった。

「さて、挑発したお仕置きのTIMEだ。
とは言え・・・俺は貴方に酷いことは出来ない。
ありったけのKISSで、許してやるよ」

私は、笑い出してしまう。
お仕置きの意味が無い。
幾度と無く重なるキスが、
じわじわと理性を破壊する。
その破壊力は凄まじく、
二人でこうしていられるなら、
何でも良いという気分になる。


「・・・あ、・・・っ、
ね・・・、翼君」

「What? どうした?」

「写真、・・・たくさん、撮ろうね」


君がいないときに、
私が君を近くに感じていられるように。
耳元で囁かれる台詞は、英語で。
私は意味を理解する思考力も無いまま、
行為に熱中したのだった。



















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