妖艶ヘムロック

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「うっわ〜〜〜、こいつ・・・何やっちゃってんの!?」

「叩き起こしなさい、南先生」

「いやいや、そこまで怒るようなことでもありませんし」


職員による、職員のための飲み会にて。

いつになくご機嫌の校長の大盤振る舞いにより、
私たちはお座敷でどんちゃん騒ぎとなったのだった。
葛城先生のおかげで大いに盛り上がりつつ・・・
(脱ぎだしたときは、流石にストップが入った)、

宴もたけなわ、というところで、
真田先生が酔いつぶれた。
私は真田先生の隣の席に座っていて、
肩にもたれかかって休んでいるのを微笑ましく
思っているうちに、
ずりずりと落ちてきて、
膝枕になってしまったのだ。

「・・・う〜〜〜・・・・」

「あまり、お酒が強くないんですね。
真田先生」

これでは皆さんにお酌をすることも出来ないが、
ちょうど良かった。
私もあまり強くないので、
少し休みたかったのだ。
私と真田先生を囲い込むようにして、
皆さんがのほほんと見守っている。

「役得ですねぇ・・・」

「重くねぇのか?」

「たいして重くはありませんけれど。
ただ・・・目を覚ましたとき、
決まり悪い思いをなさるんじゃないかしら」

「ま、それくらいは仕方ねえ。
それにしても、気持ち良さそうだな」

「俺も今度真似してやるぜ・・・!
南ちゅわ〜〜んの膝枕・・・う〜ん、うっとりだぜ」

「・・・葛城先生なら起こします」

「何だよそれ!!
ひいきだよ南ちゃん!」

「葛城先生が真田先生にぱかすか注ぐから
潰れちゃったんでしょうに!」

衣笠先生が、指で頬を押した。
全く反応が無い。

「・・・こんなに大騒ぎしても起きないのは、
疲れていたんでしょうね、真田先生」

幸せそうな寝顔だ。

「良い夢でも見てる顔ですよねぇ」

思わず、笑ってしまう。

「・・・流石にここで
ずっと見ている訳にもいかないね。
校長と教頭を放っておくのも何だし・・・
行こうか、皆。
南先生は、真田先生が起きたら、
また飲もう・・・ね?」

「・・・はい」

鳳先生の言葉に、私は頷いた。





栗色の髪に、そっと触れてみる。
息が少し酒臭くて、少し苦笑した。
仕方の無いひとたちだ。
断りきれずに飲んでしまったのだろう。

「・・・真田先生、起きてください」

柔らかい頬をつねってみた。
すると、お腹の方に向きを変えてしまう。

「・・・って、本当に起きなさい」

スーツの裾を掴み、何事か呟いている。
耳を寄せて、聞き取ると、






「・・・南先生・・・好きです・・・」





このひとは・・・時々、本当に私の予想を超える。
思わず引き剥がし、
寝とぼけた真田先生に問いただすと。
彼は一切寝言を覚えていなかった。

翌朝、二日酔いに苦しむ先生が私に謝ってきた。


「南先生・・・俺、
酔い潰れて先生の膝で寝たってホント?」

「本当ですよ。
反省してください」

「うわ〜〜〜、ごめん!
ホンットにごめん、全然覚えてない」

私はむしろ、覚えてないことを謝って欲しい。
しかし、本気でしゅんとしている真田先生を相手に、
怒りを持続させるのは難しかった。

「・・・良いですよ、
その代わり、今度一緒に遊びに行きましょう。
・・・付き合ってもらいますから、
覚悟してくださいね?」

「うん、分かった!どこでも、付き合うから」


ほっとしたように笑う真田先生は、
実は割りと、天然でズルイひとなのかもしれない・・・。











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